[7] 旧室谷邸保存要望に関する報告 2007/04/06 18:44:59 

 
以下は、旧室谷邸保存要望に関して、NPO法人アメニティ2000協会から依頼された経過報告文ですがここにも紹介します。     野崎瑠美                                             

 昨年暮れ12月22日、新聞紙上の「須磨の旧室谷邸来年初め解体へ」の文字が目に飛び込み、突然のことに誰もが驚いた。その日は丁度ヴォーリズ設計の住宅、京都の駒井邸にて、山形政昭先生の講義を交えた見学会が日本ナショナルトラストで企画されており、それに参加したことがこの件への関わりの発端であった。その日の懇親会で、山形先生、元ヴォーリズ事務所所長の石田忠範氏、アメニティ2000協会の清水彬久氏にお目にかかり、室谷邸の保存について話して帰った後すぐに、清水さんから「今後のことについて一緒に考えませんか」という呼びかけがあり、それは始まった。
 
新聞紙上で周知のことであるが、ことの経過は以下のようである。
・ 所有者、室谷家の長女、室谷尚子氏は、ヴォーリズ設計の登録文化財・室谷邸の建物を保存活用してくれることを前提に、2005年8月に姫路の不動産会社に売却した
・ 現所有者、不動産会社は、旧室谷邸で個人所有の美術品の展示をする予定であったが、主屋の傾斜が進み、湿気による内装の腐食が激しいことがわかり、さらに地盤沈下による倒壊の恐れがあるということで、登録文化財抹消の為、解体を前提とした現状変更届けを12月14日、文化庁宛に提出した
・届け出制である登録文化財は、所有者が現状変更届けを提出した1ヶ月後には解体出来ることになっている

 ここに至って、解体を止める手だてはあるのか、年末年始の時期何ができるのか、お正月休みにも拘わらず、室谷尚子氏、室谷邸近隣住民、各建築団体代表者、関係者等が集まり、焦りの中で今出来ることに全力を尽くした。
1月5日
・兵庫県知事、神戸市長、文化庁長官宛に、以下の団体等から解体凍結の緊急要望書を提出
   (社)兵庫県建築士会
   (社)日本建築家協会近畿支部
    同保存再生委員会、同兵庫地域会   
    兵庫県建築設計監理協会
    軽井沢ナショナルトラスト
    大阪芸術大学・山形政昭
    特定非営利活動法人アメニティ2000協会
・新聞各社に、要望書提出と、不動産会社の約束違反に対する室谷尚子氏の心情の記者発表
・契約書には、建物を保存活用するという条件については書かれていないが、口約束は有効なのか、解体工事差し止めは出来るのか、そもそもこの契約は約束違反として無効と出来るのか 
→新聞発表後、弁護士に相談するが、裁判上はかなり難しいとの判断
1月6日
・姫路の不動産会社社長が、当時の不動産の仲介業者に解体延期の意思を伝えたことが室谷尚子氏に伝えられる
・一方、不動産会社の代理人は、解体延期について全く聞いていないと、予定通り、16日以降の解体工事着手を近隣に通告
1月12日
知事が移築やむなしとして、移築先について検討せよ、と各部局に指示が出たとの情報を得て、須磨離宮公園への移築復元要望書を県知事、市長に緊急に提出
1月16日
 解体工事始まる
1月27日
(社)日本建築学会  県知事、神戸市長、現所有者宛に保存要望書提出
2月9日
 主屋の建物すべて消滅
2月末
 わずかな庭木を残し更地に

 解体工事中も、県、市の文化財課に移築について打診するが、移築先の見通しもないまま、「移築を前提にした解体を指導している」と、行政として限界だという型にはまった答しか返ってこず、貴重な歴史的建造物を後世に残すという文化財課としての役割は全く見えないまま今日に至っている。また、県と市の関係も微妙なものがあり、移築に関しての県の積極的な姿勢にも拘わらず、市が県に協力を求めなかった経緯も、未だ理解できないままである。
 文化庁から回答された、現状保存に7億円、移築再建に18億円かかるという金額を免罪符のようにして、緊迫した財政では困難であるという言い訳に終始する神戸市の姿勢は文化都市の名に恥じるもので、このままでは後世に汚点を残すものとなる。各方面に様々に働きかけた結果、最初からやる気のないところでは解決の道が一向に開けないことがよくわかり、市民の誇りであったヴォーリズの建築が消えてしまったことの喪失感と共に、行政の無策と無責任さに、怒りと無念な思いで一杯である。須磨離宮公園前の地では、地域の景観としても大切な市民の財産であった、あの美しい旧室谷邸の姿はもはや影も形も無く、移築を前提にしたという解体からはほど遠い無理解で乱暴な解体によって、再建可能な部材の保管は一体どうなっているのか、今はこの目で確かめるすべもない。
 最後に、アメニティ2000協会が中心となって、この緊急事態に対応していただいたことを深く感謝申し上げると共に、今後どこかで移築再建が実現出来る日が来るという事態の好転を、一縷の希望をまだ持ち続け、これで終わりではない現況報告としたい。


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